Graphic
Title
Hiroshi-Back
 



ストーリー

Art

不満を抱えた十代の少年、宏は学校で問題を抱え、ある日突然自分の部屋に閉じこもってしまう。 その後2年もの間、部屋から出る事を拒否し、誰も中に入れようともしない。宏の両親はそのことを恥じ、友人や親戚にも事実を隠そうとする。当然のことながら、家庭は次第に崩壊してゆく。この物語は、日本独特の社会現象といえる「ひきこもり」をテーマにした作品であるが、この「ひきこもり」と呼ばれる日本の若者の数は、百万人にものぼると言われている。

「ひきこもり」は日本において、大きな問題となっている。社会から離脱する「ひきこもり」は無秩序状態とされ、近年この状態に陥る若者が増え続けている。 社会との関わりを遮断した若者は、多くの場合、自らの部屋に閉じこもり、外部との一切の接触を拒む。昼夜が逆転し、昼間は眠り、夕方になると起きだし、夜通しテレビを見たりビデオゲームをする生活を送る。コンピューターや携帯電話を所持するものもいるが、多くは友達も殆どいない。この鬱状態が数ヶ月、極度の場合は何年も続く(詳しくは「ひきこもり」のページ参照)。 両親は、ソーシャルワーカーや心理学者に助けを求めるよりも、その事態を恥じ、周囲から事実を隠そうとする。

物語は、主人公である宏がひきこもるまでを描いたシーンの連続で始まる。彼が部屋にひきこもってからは、彼の姿を見ることはなく、彼の家族、主に母親の淑子に焦点を当てる。手に負えない息子の行動を持て余し、長い間ひきこもる息子の言いなりにならざるを得ず、息子の為に食事を用意したり要求をかなえ続け、近所の人や友達の前では平静を装い続ける。宏の部屋の中の描写は殆どなく、中と外を隔てるバリアといえる扉の外にいる淑子の立場で語られる。長男の宏と淑子はお互いに依存関係にあり、それは日本の息子と母親の間にはよく見られる傾向である。父親はいつも仕事で家には殆ど居らず、淑子と宏はますます互いに依存関係に陥る。淑子は宏が生きていく限りずっと、そのように面倒を見続けるかのように感じられる。

『扉のむこう』は英国人監督ローレンス・スラッシュの長編デビュー作であり、SIZEのエグゼクティブプロデューサー齊木貴郎との共同製作である。アメリカ人アーティスト、PAN AMERICANが音楽を提供。キャストの殆どに役者ではない一般人が起用され、力のこもった物語構成でありながらも、ドキュメンタリーの要素が織り込まれている。古典的イタリアのネオリアリズムの影響を受けたスタイルである。

主人公を演じる根岸健太は、この映画が撮影された当時、埼玉県に所在する「りんごの木」の生徒であった。「りんごの木」とは増田良枝が登校拒否の学生や、元ひきこもりであった若者を対象に設立した非営利活動団体である(詳しくは「ひきこもり」のページ参照)。

Copyright 2008, SIZE and Growth Films, All Rights Reserved